ベンジャミン・グレアム氏は企業を徹底的に分析し、割安株を買うという現代株式投資の基本スタイルを確立しました。その偉大な功績から「ウォールストリートの最長老」「バリュー投資の父」と呼ばれています。
また、コロンビア大学のビジネススクールでウォーレン・バフェット氏を教えた人物です。
彼の著書である「賢明なる投資家」は、1949年が初版にもかかわらず、今なお投資家たちの間で読み継がれるバイブル的な存在であり、ウォーレン・バフェット氏はこの本を「投資に関する書籍としては、史上最高のものである」と述べています。
- イギリス生まれ、アメリカのファンドマネージャーであり、ウォーレン・バフェットが「生涯の師」と呼ぶ投資家
- 著書「賢明なる投資家」は60年以上前にわたり読み継がれる投資家のバイブル
- 「ウォールストリートの最長老」「バリュー投資の父」
- 目次
- 生い立ち
- 投資スタイルとは
- 投資の格言
- もっと詳しく知る方法
ベンジャミン・グレアム氏の生涯

ベンジャミン・グレアム氏は1894年にイギリスのロンドンで生まれました。父親は美術品などを扱う優秀な商人であり、一家はかなり裕福でした。
一家はニューヨークへ引っ越しますが、1903年に父親が亡くなると、グレアム家の財政状況は一変しました。そんな中でもベンジャミンは非凡なる才能を開花させました。名門のコロンビア大学へ入学し、さらに成績上位者として奨学金も獲得します。大学へ残って教鞭をとることを頼まれるほど学問が得意でしたが、そのオファーも断り、卒業後はウォール街の債券取引会社へ就職し、アナリストとして出世街道を駆け上ります。
1926年には、ジェロール・ニューマン氏と共同投資会社「グレアム・ニューマン社」を設立しました。2年後には、母校のコロンビア大学でビジネススクールでの講師も掛け持ちます。生徒の中には、ウォーレン・バフェット氏もいました。
1929年の世界恐慌では、その影響をもろに受け、一時は経済的困窮に陥りました。しかし、持ち前の才能と気力で、今度はどんな不況や社会的変化にも耐えうる投資理論を構築しようと試みます。その結果生まれたのがバリュー投資です。これは今日の投資家たちが用いる諸理論の土台的役割を果たしています。
ベンジャミン・グレアム氏の投資手法と実績

世界恐慌後、グレアム氏の関心は市場の変化に対しても耐えうる投資法の模索にありました。その試行錯誤の結果として、バリュー投資という投資法が生まれました。
バリュー投資とは、一言で言うと、企業価値に対して割安となっている株を見つけ、長期保有し、その企業が備えている本来の価値に株価が追いつくことを待つ、という投資法です。バリュー投資には、様々な利点があります。
1つは、割安株を買うのだから株価がさらにそこから大幅に下がる可能性が低いこと。2つ目には、企業価値を多面的にきちんと分析しているので投機性(ギャンブル性)が低いこと。3つ目には、長期保有をして長期スパンでの株価上昇を待つので、毎日株価をチェックするなどの手間や、精神的な負担を投資家は負わなくても良いこと。などがあります。
グラハム氏が買いだと判断する割安株の基準があります。ここからは具体的にどのような株が割安株なのか、それらの基準をいくつかご紹介します。
「企業の規模がある程度大きい」
小規模な企業は安定性が欠如していると考え、選択肢から除外します。
「財務状態が良い」
具体的には、流動資産(1年以内に現金化可能な資産)と流動負債(1年以内に支払わなければならない負債)の比は最低2:1でなければなりません。そうでなければ、万が一の出来事に企業が耐え得るとは考えないのです。ちなみに、この流動資産と負債の2:1の公式は、中小企業診断士などの専門資格用のテキストでも紹介されますが、実は元祖はベンジャミン・グレアム氏だったのですね。
「過去10年間、赤字決済がない」
安定性の裏付けとして10年間を見ます。
「継続的に配当がある」
ポイントは、配当金の高低を見るのではない、ということです。とにかく長期にわたって配当がなされ続けているかどうかを見ます。理想は、20年間連続配当です。
「PERが過去3年間の平均収益の15倍以下」
PERとは、株価収益率といって、その時の株価が一株あたりの純利益の何倍か、という指標です。PERが高いということは、その株は割高ということになり、低ければ、割安株ということになります。
「企業の一部を買うことに楽しみがある」
何も知らない企業や、あまり良い印象を持っていない企業よりは、ある程度その業界のことを知っていたり、親近感があったりする企業の方が良いということです。なぜなら、バリュー投資は、綿密な企業分析が必要ですし、長期保有を基本にするため、その株との付き合いが長くなるからです。興味のない企業と親しみのある企業、どちらがより良いか想像すればその差は歴然です。
以上のような基準を用いて投資を行ったベンジャミン・グレアム氏は世界恐慌以後、ウォール街史上で最も優れた成績をおさめた投資家となるのです。
彼の著書である「賢明なる投資家」は、1949年が初版にもかかわらず、今なお投資家たちの間で読み継がれるバイブル的な存在です。ウォーレン・バフェット氏はこの本を「投資に関する書籍としては、史上最高のものである」と言いました。
ベンジャミン・グレアム氏の投資の格言
ここからはベンジャミン・グレアム氏の格言を紹介します。
- 自分が何をしているのかを知れ――己の事業を知れ
出典:賢明なる投資家 - 信頼のおける計算の結果、相応の利益を得るチャンスが十分にあると考えられる場合を除いて、その事業(投資)に踏み出してはならない。
出典:賢明なる投資家 - ある。基本的に、真の投資家にとって、株価変動の持つ重大な意味はひとつしかない。
相場が急落すれば抜け目なく株を買い付け、急騰すれば売却するチャンスなのだ。
それ以外のときには株式市場のことなど忘れ、受け取る配当金と企業業績に注意を注いでいた方が良い結果につながるものなのである。
出典:賢明なる投資家 - 投資が最大に知的な行為となるのは、それが能率的に行われたときである。
出典:賢明なる投資家 - 長年の経験から分かっていることは、投資家が最大の損失を被るのは、好景気下で優良とはいえない証券を購入したときだということである。
出典:賢明なる投資家
まとめ
ギャンブル性を極力排除した安定的な投資を求めるならば、ベンジャミン・グレアム氏の提唱したバリュー投資を学ぶことは非常に価値あることでしょう。本当に価値のある企業の割安株を見つけることは、そうそう簡単なことではありません。
しかし、慣れてくるとそこには宝探しのような面白さがあります。さらに、その過程で投資家としての実力や勘を磨くこともできるでしょう。是非一度、バランスシートや損益計算書を見ながら上記の基準を確認してみてください。